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中国が管理。Bitcoinは隠された預金封鎖用の銀行

管理者不在で政府の影響を受けないと言われているビットコインが、中国が持つブラックホールのような引力に取り込まれた。もはや振り切れるものでなく、ゴキブリホイホイとしての利用法を待つだけか。

プルーフオブワーク(Proof of work以下POW)という考え方が、国家や銀行に依存せず中央システムを持たないビットコインの仕組みを支えていたはずが、中国の影響力は一体どこから出てくるのだろう。

POWが何かザックリと説明すると、売れ切れ必至のドラクエクソゲースペランカーが抱き合わせ販売されているみたいなもの。まず、転売屋の観点から考えてみると、抱き合わせセットの単価が高いので資金力がないと大量に仕入れることができなくなる上に、そもそも仕入れ価格が高いので売り切るのが難しくなり、転売商品としての魅力が無くなってしまうわけだ。どうしてもドラクエがほしい最終ユーザーは、スペランカーに舌打ちしつつ購入する可能性は十分あるとおもう。こうして、転売屋は買わず、最終ユーザーは無事ドラクエを買う事ができました。めでたしめでたし。

つまり、POWとは、コストを払える人に物事をやらせるという考え方で、その価値に対して取得コストが安いモノ(例えばドラクエ)と追加コスト(抱き合わせのスペランカー)を組み合わせて本来の価値に合わせるという考え方だと思う。

POWの応用法として、例えば迷惑メール対策がある。 メールの送信コストは安すぎるので、送信するのに一通100円徴収するようにしたらどうだろう。恐らく、迷惑メール業者は何億通も送信するのをやめるのに違いない。なにせ1億通送ったら100億円必要になるから、とてもペイするものじゃない。

現実に課金するのは難しいが、例えばPCが3分ほど計算しないとメールを送れなくするというやり方なら、金銭が絡まないから口座もいらないし可能だろう。一通3分かかるとしたら、知り合いなど正規のメールではまあ許容範囲かもしれないけど、何億通も迷惑メールを送る業者からしたら時間ばかりかかり電気代もかさむから悪夢だ。つまり、POWによって正規のメールであることを証明できるわけだ。

実際に、このような実装があるのだが、残念ながらメール世界では普及しているとは言えない状況にある。もし、メールPOWが普及していたとしたら、一部の技術力のある会社は計算を速くする専用チップを作成し、そこそこネットができて電気代が安い国に移動したのに違いないが、多くの業者はPOWのコストが迷惑メールのメリットを超えて廃業となったのではないだろうか。

銀行振込のような取引を証明するためにPOWを使うことを考えた場合、何億通も送る迷惑メール業者とちがって、取引を改ざんする側はたった一度書き換えればいいので、POWの有効性は低いように感じられる。しかし、あえて正規の取引をする場合でも大量のPOWを行っておけば、改変側でも大量のPOWが必要となる。更に正規側のPOWが取引の度に積み重なってゆく仕組みを採用すれば、改変するのは極めて難しくなる。

積み重ねの仕組み(ブロックチェーン)とは何か? これは前のPOWの結果を元に、さらなるPOWをおこなうという入れ子構造のことだ。入れ子構造といえば有名なロシアのマトリョーシカという人形がある。マトリョーシカたとえば、この人形の中に収納されているある人形を偽造して大きくしたら、今までは収納できていた次の大きさ以降の人形に収納することはできなくなる。この時点で、とある段階の人形が偽造であることが判明する。しかし、偽造人形より大きい人形を全部偽造すれば収納できて完全犯罪が可能かもしれない。そこで、POWとして、それぞれの大きさの人形を複雑で作るのが面倒な人形にしておけば入れ子が増えるほど、すべてを作るのは困難を極める=偽造が難しくなってゆく。これが積み重ねるという意味だ。

その作業は実際こんな感じ。 hashという関数に入力文字列を入れると、唯一のハッシュ値が出力される。この出力されたハッシュ値と適当な値を結合したものを、再びhash関数の入力文字列にして入れ子構造にすると、人形の形と同じで、以前の値がその後に影響するようになる。 y = hash(x) → y1 = hash(y+適当な値) → y2 = hash(y1+適当な値)→ y3 = hash(y2+適当な値).......

そして、面倒な「人形」にするには、次のようにPOWを課せばいい。

<?php $sha256prevBlockHash = "00000000000008a3a41b85b8b29ad444def299fee21793cd8b9e567eab02cd81"; echo '前のハッシュ値'.$sha256prevBlockHash.'と適当な値ノンスを結合して、上1桁がゼロになるまで頑張ります。 ';

$nonce = mt_rand(); echo 'ノンス(適当な値)'.$nonce.' '; $data = $sha256prevBlockHash.'+'.$nonce; echo 'これらの文字列を結合したもの'.$data.' ';

$sha256BlockHash = hash_hmac('sha256', $data, false); echo '結合文字列をハッシュ関数に入れてハッシュ値を求める'.$sha256BlockHash.' '; if(substr($sha256BlockHash, 0, 1) == '0'){ echo 'ヤッタ! ゼロが出ました! POW作業ご苦労様です。'; }else{ echo '上1桁が'.substr($sha256BlockHash, 0, 1).'だからゼロ以外でした。このWEBページをリロードするとノンスと結果が変わるので再チャレンジできます。'; }

?>

上1桁だけならまだいいですが、これが上10桁とか20桁とかを0にするになってくると、とても面倒なPOW作業となります。

現実世界でこれをやっているのがビットコインで、迷惑メールの場合とちがって正規側でも大量のPOWが必要になるから、実際にそこそこネットができて電気代が安く技術者が多い中国にビットコインのPOW作業=マイニングが移動したのは必然だったといえるわけである。そして、この作業をするCPUパワーのうち51%が善良なPOWを行っているという状態では不正はできないが、もし51%が悪意を持てば不正が可能となり、ビットコインの信用は揺らぐことになる。POWやその積み重ねがあったとしても頑張ってそれを処理してしまう力技の犯罪者がでてくるとピンチになるわけだ。

この51%問題について、発明者中本の論文には以下のように書かれている。

本システムは、良心的なノードが集合的に、攻撃者グループのノードを上回るCPUパワーをコントロールしている限り安全である。 もし欲深い攻撃者が良心的なノードの合計を上回るCPUパワーを作り出すことができたとして、攻撃者はそのパワーを使って、他の良心的なノードから自分の支払った金額を盗んで取り戻すか、新しいコインを作り出すかの選択を迫られることになり、おのずと自分の資産価値とそれを支えるシステムを損なうよりも、ルールに従って行動し、他の全ノードを合わせたよりも多くの新しいコインを作りだすほうが、自分の利益になると考えるだろう。

良心的なPOWが過半数を占めているうちは大丈夫だし、もし攻撃者が過半数を超えたとしても、攻撃者は合理的に考えてビットコインを滅ぼすようなことはしないだろうというわけである。

中本の論文に書いてあることは本当だろうか? 大切なインフラを戦争で破壊することがある人間がそれほど合理的か不明だし、仮に合理的だとしても、現状、ビットコインPOWの51%以上を握っているのは中国であり、ゴールドマンサックスのレポートによれば人民元建ての取引が8割程度を占めるという。このように、ビットコインは中国によって支配されている状況で、中国の合理性はまた別のところにあるかもしれないのに。

POWをやっている中国の個人にはその意思がなくても、中国という国家には「自分の資産価値とそれを支えるシステム=ビットコイン」を損なう方が国益上有用という考え方があっても不思議ではない。

そして、中国では個人の財産より国益のほうが遥かに重要だ。発明者の中本氏は考えなかったかもしれないが、腐敗撲滅キャンペーン、権力闘争、核心的利益と、彼らにとってより重要なものはたくさんある。ビットコインがこれらの逆鱗に触れる時、現状のように中国に集中していると技術的な防御策など跡形もなく吹き飛ばされてしまうだろう。

そもそも、中国では規制されているはずなのに人民元建てが80%で、ネットも余裕で規制できるはずなのにPOWデータセンターは運営を続けている(タオバオではPOW用マイニング装置の販売が禁止されているが、やっている人はやっている)という状況は、不自然なように思える。もはや、ビットコインは管理者不在のP2P暗号通貨などではなく、中国によって生かされている別の何かというのが、その真の姿なのかもしれない。

中国で、わざわざ使い勝手の悪いビットコインを使うとしたら、ワイロなどの灰色収入や犯罪・テロ資金を海外へ送金するとか貯金するとかだろう。一般人はまず利用しない。規制しているようでしていないという不自然な状況も、一般資金を遠ざけ、アングラ資金を呼び寄せるといった点で不自然とはいえない。

国家の管理を受けないP2P暗号通貨といった看板を掲げるビットコインは、こういったものを呼び込むには絶好のトロイの木馬だともいえる。

そのような資金ばかり集まるのであれば、当然国益に反するものだから、最後は破壊するためだけに生かされているだけだと考えられ、P2Pといった管理者不在を逆手にとって預金封鎖を誰にも文句を言われずに速やかに実施することを目的とした装置として見ているのかもしれない。また、中国には独自暗号通貨を作るという話もあるので、生きた実験装置ともみなしているだろう。さらに、何か工作をするには資金が必要だが、必ずネットワークに繋がっているビットコインクラッキングで調達(マウントゴックスの例もある)することは実体のお金より簡単なので資金調達が容易だ。

つまり、政府にとってビットコインの良いところは、次の4点となる。 1.効率よくアングラマネーを収集できる点。一般の資金と分離できるのがいい。 2.預金封鎖(破たん)しても政府は一切関知しなくていい点。これが普通の銀行なら文句言われまくり。 3.政府が同種の通貨を作るときの雛形として、耐性試験など様々なテストを行える点。もし、実験に失敗して破壊されても文句を言われない。 4.工作資金をクラッキングで用意できる点。

中国の強大な善意のPOW(マイニング)によって獲得したコインや不正アクセスで手に入れたコインを汚職役人や犯罪者・テロリストにたっぷり売りつける。

バブルで価格を吊り上げたり、いろいろとやった後‥‥。

いつの日か、中国のPOWが悪意に反転し、更に他国のマイニングプールに対する一連のサイバー攻撃から始まるビットコイン破壊オペレーションは、サイバー戦部隊の作戦計画の一つとして用意され、最大の効果を上げるべく実行タイミングを慎重に計っているのかもしれない。

市場操作は中国のオハコ。それはビットコインでも例に漏れず‥‥ビットコインゴキブリホイホイとしての最終的な役目を終え、中国の闇に消えてゆく事になるだろう。

既に、分散型で国家や銀行に介入されない暗号通貨なんてどこにもないのだから。