車

自動運転AIは必ず中国で花開く。その後、自動車産業の中心は中国に

自動車産業はとてつもなく裾野の広い産業だ。アベノミクスが頑張って円安を目指すのも、国の中核をしめるこの産業を後押しするという意図があるのだろう。
しかし、虎の子の自動車産業に危機が迫っているとしたら…。

日本の番組「今こそ!見たか日本の底力SP」というTBSの番組(4月27日放送)で、電動アシスト自転車をペルーに持ってゆく話をやっていた。ペルーのおばあさんがこれをもらって喜んでいるところを放送していて「日本の技術はすごい」的なナレーション。
いや、それすごいのか? と。中国の電動自転車は全く漕がなくていい。こちらの方が便利じゃないかと。
日本は道交法の関係で自走タイプは免許が必要になるので、電動”アシスト”自転車なるものを日本基準に合わせてメーカーが作ったのだろう。そういえば、日本ではセグウェイとかも公道を走れない。

日本はキッチリしているからなのか、国民性なのか、問題があった場合の許容値が非常に低い国だ。だから、セグウェイでも電動自転車でも、そう簡単に受け入れることができない。これは恐らく自動運転でも同じだろう。石橋を叩いて叩いて、叩きまくって初めて受け入れる事になるのに違いない。

中国の道を眺めていると、エンジンバイク、電動自転車、3輪電動自転車、電動スケボー、自動車などが入り乱れ、ナンバーの無い自動車やバイクも数多い。更にはバイクは完全に信号無視で突っ走る。つまり無茶苦茶だし適当だし事故も多い。これが上海の状況だから田舎の方は推して知るべしで、農民が作った外側だけスーパーカーとかが走っている。こうした状態が放置されているのは、問題への許容度が非常に高いからだろう。

いま、中国のIT企業が続々と自動運転車の研究を始めている。これは制御「ソフト」だから一瞬でコピーできる。コピーは得意技だからすぐに一定の水準まで追いつくだろう。
そして重要なのは、機械学習だから色々な事例を学習させたほうが優秀な自動運転ソフトになるということ。Googleが容量無制限の写真保存サービス「フォト」を提供しているのも、機械学習のためのデータを集める為だ。だから、中国の交通がカオス的であるのは非常に都合がいいし、柔軟な法律運用(人治主義とも言う)、新しいものが入ってきてもすんなり受け入れるのも自動運転の開発には好都合だ。

そうして、中国の大手IT企業で醸成された技術が徐々に野に下り、全く新しい企業が次々と誕生することになるのではないだろうか。自分の車を自動運転カーにする安価なキット(AndroidタブレットPC、GPUボード、センサー、アクチュエーター等からなる)が数年後タオバオに出回り、近所の自動車整備工場で適当に装着され、電動バイクの時のように、なし崩しで走り出すのに違いない。これはベータテストと商用利用を同時に公道でやるようなものだが、中国の交通状況からしてアリだろう。この適当さが中国の強みだ。

多少の事故より(中国の場合人よりAIのほうが事故が減りそうだけど)、運転の最適化による大気汚染解消のほうが急務だから、ウーバー(一応違法だけどほとんど放置)のように当局も目をつぶるに違いない。こうして機械学習は鍛えられ、最強の自動運転ソフトとなる。日本がもたついている間に自動車の頭脳を中国は手に入れ、いずれ手足に過ぎない自動車本体を支配することになる。

自動運転ソフトは更に進化を続け、ウーバーのような配車ソフトと連携してお金儲けモードが実装され、自分が乗らないときは勝手にほかの人を乗せて儲けることができるようになる。つまり、カーシェアリングが一般化し自動車の生産台数は大幅に減るのに違いない。近い将来、駐車している車は無駄とか、利回りが何パーセントかと言うかたちに車の所有者の意識が変わるだろう。

自動車つくってりゃいい。安売りするために円安にすりゃいいという安易さ。半導体立国と誇っていたら、いつの間にか周りの状況が全く変わっていたということが再び繰り返される可能性が十分あるのではないか。

今の電機メーカーのように自動車メーカーも凋落し、下請け産業からドライバーまで、ますます仕事がなくなりそう。正確にはある程度のスキルで可能な仕事がなくなるのだが、皆がAI屋に成るわけにもいかず、はっきり言って、ついて行けない。

10年以内に、国の屋台骨となっている既存の車産業が大打撃を受けるのは確実だから、仕事と消費を分離して消費者を創造しないといけない。