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中国電子ブック事情 政府規制とカオスの狭間から生じる流れとは。歴史は繰返す?

10月9日、新闻出版総署は《关于发展电子书产业的意见》(電子書籍産業の発展についての意見)を発表した。その中で電子ブック業界の発展に対して具体的な要求と新たな目標を示している。《出版管理条例》、《电子出版物出版管理规定》、《互联网出版管理暂行规定》、《出版物市场管理规定》などの法規によって電子ブック業界の参入規制を確立して、電子ブック関連業務に従事する企業に対して分類審査承認と管理を実施することを明確に表明した。

11月4日、新闻出版総署は最初の「电子书业务资质」(電子ブックのライセンス)を公表し、電子ブック関連業務に従事する21軒の企業に許可証を授与した。業界参入規制の設立は今後電子ブック業界が、ネット業界と同じように政府管理下の規制業界となることをを意味している。最初に関連する資格を獲得した機関は業界のリーダー企業になると思われる。

「电子书业务资质」は電子ブックを出版する資格、電子ブックを複製する資格、電子ブックを発行する資格、電子ブックを輸入する資格の4つに分けている。多数の企業は1項の資格だけを獲得したが、8軒の企業は2項の資格を獲得した。同時に3項の資格を取得したのは「中国出版集团数字传媒有限公司」だけである。

近年、デジタル出版産業の急速な発展に従って、電子ブックは爆発的な成長を示していて全世界で注目される新興の出版業態になっている。中国国内でも多くの企業が電子ブック業界に参入し、ハードウェアメーカー、技術プロバイダー、コンテンツプロバイダーが共同に参与する産業発展パターンになっている。

電子ブックの概念は以前からあったが、今年「漢王」電子ブックリーダーの販売数の増加に従って、電子ブックはわずか1年で成長率の最も著しいデジタル製品となっている。統計によると、2009年中国の電子ブックの出荷台数は382万台だった。2010年上半期の出荷台数は米国に次ぐ世界全体の21.4%を占めており、今年は910万台に達すると予想される。去年、中国の電子ブックの売上は14億元に達している。

1年で国内の電子ブック市場は「漢王」など僅か数軒の企業しかなかった状況から、現在の「盛大」、「文房」、「纽曼」、「华为」、「联想」など40以上のブランドが競争する状況に発展している。他の中小企業も加えれば、総計は百軒は超えるだろう。

新しい政府規制は必然的に電子書籍の出版市場に大きな影響をもたらすと考えられる。情報によると、2011年から新闻出版総署は電子出版物の書籍コードのネット実名申請を展開し、企業に更に高品質で、規範化されたサービスを提供する予定だという。


 

 

 

电子书业务资质名单(中国電子ブック業務資格リスト)

一、获准电子书出版资质单位名单(電子ブックを出版する資格を獲得した機関リスト)

  1. 中版集团数字传媒有限公司

  2. 人民出版社

  3. 上海人民出版社

  4. 甘肃人民出版社

二、获准电子书复制资质单位名单(電子ブックを複製する資格を獲得した機関リスト)

  1. 中版集团数字传媒有限公司

  2. 汉王科技股份有限公司

  3. 北京纽曼理想数码科技有限公司

  4. 爱国者数码科技有限公司

  5. 北京方正飞阅传媒技术有限公司

  6. 北京汉龙思琪数码科技有限公司

  7. 天津津科电子系统工程有限公司

  8. 广州金蟾软件研发中心有限公司

  9. 读者甘肃数码科技有限公司

  10. 上海盛大网络发展有限公司

  11. 上海世纪创荣数字信息科技有限公司

  12. 湖南省青苹果数据中心有限公司

  13. 方正国际软件有限公司

三、获准电子书总发行资质单位名单(電子ブックを発行する資格を獲得した機関リスト)

  1. 中版集团数字传媒有限公司

  2. 汉王科技股份有限公司

  3. 北京纽曼理想数码科技有限公司

  4. 爱国者数码科技有限公司

  5. 北京方正飞阅传媒技术有限公司

  6. 广州金蟾软件研发中心有限公司

  7. 读者甘肃数码科技有限公司

  8. 上海盛大网络发展有限公司

四、获准电子书进口资质单位名单(電子ブックを輸入する資格を獲得した機関リスト)

  1. 中国图书进出口(集团)总公司

  2. 中国教育图书进出口公司

  3. 中国国际图书贸易总公司

  4. 北京中科进出口有限责任公司

  5. 上海外文图书公司

筆者が最近お会いしたこのリストにある中国大手IT企業の方も電子ブックは最大の商材だと仰っていました。今回の政府規制でアップルやアマゾン、Googleが中国市場を独占することは難しいのではないでしょうか。ICP規制のあるネットと同じように電子ブックにおいても中国独自の発展を遂げると考えられます。

しかし、電子ブックがCDや動画の流れだとするならば、逆にmp3の検索で大発展を遂げた百度のように電子ブックを探し出す強力な検索エンジンのようなものや、Youku(中国のYoutube)のような電子ブック投稿サイトが隆盛を極める事態になるかもしれません。

今回の電子ブック。じつは紙の本を電子化するのに個人でもさほど手間はかかりません(筆者がためしたところ、ヒマさえあれば一日50冊は余裕でしょう)。必要コストもmp3黎明期の1998年ころにCDR装置を買う程度と変わりませんので今後個人で電子化された本(自炊本)がどのような動きをするのかが業界の未来を決定づけることになるのかもしれません。

かつて、個人でmp3化された大量のファイルが大容量のipodの流行を呼び、独自のファイル形式を持っていたSONYが敗北。またナップスターWinnyと言った潮流を生み出していったことを考えれば、それが今後、出版業界で起こらないとは誰も言えないわけです。
さらに中国というキーワードを加えれば、状況がエスカレートしてゆく可能性が増加することはあっても、減ることはないでしょう。