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今はその時ではない。中国EC「漁夫の利作戦」は有効か?

投資家だって、いつまでも少年ジャンプばりの展開でいいのかよ。と、ふと考える時があるのに違いない。
どうして、我々の資金で全く関係ない連中に安く買わせねばならんのだ。と。

もちろん上場してもらって利益を上げるために全ては行われているのだが、今はただ莫大な資金が消えてゆくのみだから投資家としては焦りにも似た気持ちがあるはずだ。
つまり、金は無限ではないので、一たび価格競争に突入したら、競争に参加するプレーヤーは、皆弱体化してゆくことになる。
日本の牛丼屋と同じような展開であろうか?

では、現在大きなシェアを持つプレーヤーが過当競争で全て弱体化したとき、最大限の資源を投入した電撃作戦で攻め込めば勝てる見込みがあるのだろうか?
既存の宅配便業者も徐々に業務が改善しサービスも拡充してゆくだろうから、京東のような独自物流とまでは効率的でなくても、既存業者を使っていても物流の改善は勝手に進むだろう。
従って、今はその時ではなく、じっと我慢して相手が倒れるのを待つのが最適な戦略である。
そう言う考えもあるだろう。

しかし、価格競争での弱体化を喜ぶのは参入しようとしている新たな会社だけではない。
そもそも価格競争に参加していない業者、価格競争に参加しているふりの会社などの既存業者も漁夫の利を狙っているわけである。

そして、中国EC最大のプラットホームタオバオは、このような価格競争に真っ向から応じる必要性が無いし、個別の店が勝手に営業しているだけなので応じる事もない。
その事がこの漁夫の利作戦を難しくしている可能性がある。

そもそも、価格競争であるならタオバオは最初から治外法権のような有利さをもっているため、京東商城の価格競争ターゲットは、アマゾンや当当なら「本」、蘇寧なら「家電」といった具合の局地戦である。
つまり、京東はタオバオに挑むことなく比較的常に同じ条件で事業を行っている、アマゾンや当当網、そして今回の蘇寧をターゲットにして戦いを挑み、かれらのシェアを奪取しようとしているのである。
これら京東と同じ条件で戦っている業者カテゴリーであるならば、京東は物流という差別化要因があるので、確実に勝てるという確信があるのだろう。
やはり、この京東を含めた、このカテゴリーのEC店の差別要因としては宣伝もさることながら、やはり物流=返品のしやすさを含めた利便性である。


そして、もし日本の大手ECが中国へ進出すると、どのカテゴリーに入るかと言えば、自動的に京東のターゲットと同じカテゴリーに入ることになると思われる。
決してタオバオのカテゴリーに到達することはできない。

そして、タオバオじゃないカテゴリーに属するEC企業は、京東も含めて現在の所はほとんどすべてが赤字。今はただ投資家の資金を食いつぶしているだけだ。
真の価格競争には戦う前から既に負けているので、極限の利便化のために投資したり広告費にメチャクチャ投資したり、とにかく利便性サービス提供のインフラ構築に金がかかる。
この分野、京東が戦端を開いた価格競争は話題集めに過ぎず、さほど意味は無い。客の本心はといえば、安い所かサービスが良い所かという選択に収束してゆく。
安い所=タオバオ。サービスが良いところ=京東。とちらに頼もうかと考えるのだ。

安さには到達できず、利便性サービス提供のインフラ構築にはかなりの時間がかかる。
後から来た者には、両方とも手にすることはできない。

今はただ待っていて後から飛び込んだ所で、漁夫の利を得るどころか、ただ激流に飲まれ泡沫となるにすぎないのではないだろうか。
もちろん、大した資金も無く今飛び込んでも死ぬに違いない。もちろん、ブラックスワンは否定しない。