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中国EC「1号店」VIE構造の罠 規制があるから株主に内緒で資産は勝手に移転?

1号店傘下のオープンプラットフォーム「1号商城」は10月1日に新しいドメイン名 1mall.com を使い始めた。
これは1号商城が1号店から独立したことを意味する。

既存業務に加えて、共同購入チャネル「一号団」や「名品特売」、「試用中心」及び「服装館」などのチャネルも新しいドメイン名に飛ぶ。
また、淘宝網と天猫のやり方と同じように、1号店にはまだ1号商城の元の入り口を保持している。

以前、商務部はウォルマートが1号店に対する持分増加を許可した。
契約によると、ウォルマートが「纽海控股有限公司」(全資子会社の「新岗岭香港」と「纽海上海」で1号店のネット直接販売業務を持つ)に対する持分が17.7%から51.3%に増加する。
それによって、1号店の筆頭株主になった。
しかし同時に、商務部は独占禁止の調査でウォルマートの買収に対して条件を付けた。

まず、「纽海上海」今回の買収は自分のネットプラットフォームを利用して直接商品販売を行う部分のみに限定される。
また、「纽海上海」は自分のネットプラットフォームを利用して、他の取引相手にネットサービスを提供してはいけない。
そして、ウォルマート社はVIE構造で「上海益实多电子商务有限公司」が運営している付加価値電信業務に従事してはならない。

つまり、ウォルマートが1号店に対する買収は1号店のネット直接販売業務への支配権だけを獲得した。

付加価値電信業務とは1号店パブリックネットワークインフラで提供されるオープンプラットフォーム業務を指す。
この制限条件により、1号店はB2C直接販売のみ運営できる。
自分のネットプラットフォームを利用して他の商店を導入し、天猫、京東商城のようなオープンプラットフォームを構築することはできない。

1号商城の独立運営は、商務部からの制限を避けて、オープンプラットフォーム業務を続けるためだと思われる。

しかし、独立した1号商城を運営している新しい会社「上海传绩电子商务有限公司」とウォルマート、及び「纽海控股有限公司」の関係はまだ明らかにされていない。
「上海传绩电子商务有限公司」、及びウォルマートの立場についてまだ幾つかの未解決の謎が存在している。

先ず、新しい会社「上海传绩电子商务有限公司」にはウォルマートの株式が入ってるかどうか?
また、業界の推測では、1号店がウォルマートの許可を得ずに、勝手に資産を「上海传绩电子商务有限公司」に移転した可能性もある。

以前、現地法人のアリババと大株主の米Yahooの間で、アリババ傘下の決済サービスアリペイを巡って同じような問題が発生したことがあった。
当局の規制により、VIEでは決済サービスを行えなくなったとして、大株主の米Yahooに何の断りもなく、勝手にアリペイを別会社にしてしまったという事件である。

今回の事件も、当局による規制から逸脱している部分を勝手に別会社にしたということで、アリペイ問題と同じ構図である。
VIE会社の資産は、勝手に奪われるということを肝に銘じておく必要があるのかもしれない。

上場している中国ネット企業の資産は、そもそも株主の物ではないのだから。あくまでそこには「契約書」があるだけなのだ。