中国インターネット事情

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中国も本格的にLTE化。工信部が本年10月にTD-LTEとFDD-LTEの免許発行

光回線とか実線の回線が普及するまえに、無線方式の高速回線が中国全土を覆うことになりそうだ。
日本でも2012年あたりから4Gとして普及している、LTE(Long Term Evolution)と言われる無線通信方式が採用されている。

LTEにはTD-LTEFDD-LTEという方式があり、日本では主にFDD-LTEが利用されているが、中国では最大のキャリア中国移動が採用するTD-LTEが主流となると見られている。
上りと下りで異なる周波数を利用する周波数分割複信のFDD-LTEが上りも下りも高速で通信できるのに対して、時分割複信のTD-LTEでは上りと下りが同一周波数上で時間差をおいて通信するため速度は劣る。
ただし、同一周波数でいいので周波数帯域を有効利用できる特徴がある。
中国のように大量の人間が利用するならばTD-LTE方式が最適だと考えられ、実際、中国政府がTD方式を積極的に勧めてきた経緯もあり、これは中国方式とも呼ばれている。
投資効率が良い=新興国向けのこの規格を世界に普及させ、チャイナスタンダードの一環とする思惑もあるのだろうけど。
当然、華為などが大活躍予定でしょ。

さて、このTD-LTEのスピードはどんなものなのだろうか。
同コンセプトのTD-SCDMAを採用している中国移動の通信速度も、日本などで普及しているWCDMA方式を採用するチャイナユニコムに比べると遅いので、恐らくTD-LTEも速度は今一つなのだろう。
LTEは4Gとは言っているものの実際は3.9Gで、3GのWCDMAやTD-SCDMAの延長線上にある技術だ。従って3G技術の速度の差がそのまま3.9GのLTEでも出ることになる。
それでも、現在ある有線回線が低速なので、それより高速化する可能性は十分にあると思う。

2012年には15都市でTD-LTEのテスト行っていたが、2013年には20万の基地局を設置して100都市で展開する予定だという。
そのカバー人口は5億人というのだからすごい。今年中に中国もLTE時代に突入することになりそうだ。

北京オリンピックの時(2008年の中ごろ)に3Gの実証試験をやっていて、筆者もその端末を購入した記憶がある。
2012年の初めにに湖南省の農村に行ったときには、3.5GのHSDPAでリンクできた。
LTEの場合も、僅かな期間で農村まで普及することになりそうだ。

中国でもLTEの普及が本格化すると、気になるのがアップルの動向だ。iPhone5FDD-LTE対応なので中国方式のTDには対応していない。
噂はあったものの、TD-SCDMA版のiPhoneは結局登場しなかった。TD-SCDMA方式は中国でしか普及しなかったので見送ったのだと思う。
しかし、TD-LTEが世界的に普及してくると、TD-LTE版のiPhoneの登場も現実味を帯びてくるのである。
いくつかの新興国のキャリアでTD-LTEが採用されており、日本でもソフトバンクが対応している。

中国方式のTD-LTE。これを導入するなら、華為やZTEなど中国の通信インフラ企業が取り仕切ることになるので米国は警戒している。
そういえば、ソフトバンクによる米スプリント買収という話があったが進展が遅いのも、TD-LTE陣営ということが問題の一つになっているのだろう。
それでも、iPhoneまでもが登場すれば新興国ではTD-LTEが勝利し、世界を2分する規格に育つ可能性は十分にあるのではないだろうか。

チャイナスタンダードは確実に広がっているのである。